Vanilla | ナノ




kau wele3


あははと笑ってみせる悠に、顔を青くするのは奏のみだ。昂輝はそれ見たことかと膝を叩く。

「やっぱりなー。おっかしいのは奏だけってこった。この暑いのに悠も大変だよ」

「うるさいしー!良いんよ、愛のなせる業なんだから」

「愛ねぇ…その愛に甘えて悠にべったりだけど、もしも悠がいなかったらどうする気だ?」

「そんなの考えたくもない」

子供のようにぷいっとそっぽを向いてしまった奏に、昂輝は仕方ないなあと笑う。

「なあ悠、お前からもこのでっかいガキンチョになんか言ってやれば」

「え?うーん、そうだね」

そこで悠は困ったように眉を下げると、未だ己の肩に顔を押しつける相方の頭を撫でてやった。
ひとつ、ふたつ。みっつ撫でる頃、考えてみたけど、と額を上げた。


「まあ、大丈夫なんじゃない?」

「大丈夫って?」

「だってさ、俺がいなくなるとか有り得ないからね。奏には俺が必要で、俺には奏が必要なんだからさ」

ね、と悪戯っぽく破顔した悠に、昂輝はなんと答えたものやらわからなかったけれど、

「…とりあえずこっち向けよ、奏」

「……無理……」

耳まで真っ赤にしてそっぽをむいたままのダレカサンの気持ちは、ほんの少しだけわかるような気がしたのだった。



そんなむせ返るように暑い、夏の午後の話。



END.


100628


Vanillaでは昂輝初登場だったりします。
今更の登場です。

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