Vanilla | ナノ




kau wele1


むせ返るように暑い、夏の午後のことだった。



「あー…あっつー…」

もう何度目ともしれない呻き声を上げ、昂輝が板張りの縁側へつっぷす。
手には団扇が握られてはいるものの、煽ぐ気力もないのか煽がれていない。

「仕方ないよ、昂輝。夏は暑いと昔から相場が決まっているんだもの」

暑さに似合わぬ、どこかのんびりとした声を上げたのは悠である。しかし彼もまた昂輝と同じように手に団扇を持ち、ぱたぱたと煽っていた。その横では光乃が、もはや言葉も出ぬといった様子で天を仰いでいる。

ここ数日ここらは近年稀に見る猛暑に襲われており、彼らもこの悪夢のような暑さにうんざりしているのだ。


「ああ…今が冬なら、つーめたい雪が降るってのに…」

「昂輝、冬のときは早く夏になれって言ってなかった?」

「それでも良い…。俺は早く冬になってほしい…」

後半はほとんど涙声でそう言う昂輝に、悠が苦笑を洩らしたときだった。

「ゆ〜うー…」

どこからともなく聞こえてきたのは、先ほどの昂輝なぞ比べ物にならないくらいか細い声。
すわ白昼に幽霊かと悠が肝を冷やした次の瞬間、彼の肩にひどく重いものがのしかかった。

「うわあっ!」

「悠ぅ…私もう死んじゃうぅ…」

汗でびっしょりと濡らし、本当に死にそうな声を上げたのはバニラリーダーの奏である。

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