Vanilla | ナノ




ruanpe


しとしと、と外では雨音がしている。


このところ毎日こんな天気だ。夕方になると毎日のように雨が降る。先週の土日はこんなふうに朝から雨だった。

べつに特別雨が嫌いなわけではない。

でもそれは仕事のあるときだけのはなしで、今は休日のデートに行けなくてせっかく今日は水族館に行こうと一週間も前から計画を立てていてゆうも私も楽しみにしていたというのに、どうしてくれるんだ、このやろう。


「奏、雨を睨んでも仕方ないからね。いいでしょ、こうやってゆっくりするのも」


「別に私は家にいるのがきらいなわけじゃないし、それも幸せだし。でも、」


水族館のイルカショー、楽しみにしてたのに、そう言うとゆうはちょっときょとんとしたあと、笑った。


「また明日があるよ。明日、晴れたら一緒に行ってくれるでしょ?」


「…もちろん」


「なら、いいよ。それに俺だって君と一緒にいられたら楽しいし幸せだからさ」


ね?とゆうがそれはそれは嬉しそうに笑うからさっきまでのどんよりした気分が嘘のように晴れ晴れとしてしまう。
なんだか悔しい。でも嬉しい。

すると突然「あ!」と瞳をきらきらさせはじめる。
ガラステーブルの上に置いてあったティッシュ箱を手元に引き寄せて、それからおもむろに2枚取り出す。
1枚は丸めて、もう1枚でそれを包み込む。

なんだか頭のようなものが出来上がってそれが作られるのを見ていたがそれがなんなのかわからなくて、聞いてみる。


「あれ、知らない?てるてるぼうず」


「てるてる?」


「お天気の神様」


あとはこうやって首のところを縛って、と、もう1枚ティッシュを取り出して紐のようなものを作って頭の下らへんをきゅ、と縛る。
なるほど、確かにてるてる(この意味はよくわからない)『坊主』だ。てるてるというよりもつるつるだ。頭つるつる。


「で、このてるてるとかいう奴が天気を操ることが出来るん?」


「これを晴れて欲しい日の前の日に窓につるすんだよ、そうすると雨が降らないんだって。逆さまにつるしておくと逆に雨が降るんだってさ」


「…天気の神様なのに首吊りにするん」


「く、首吊り…」


やっぱりつるつるぼうずの方がいいんじゃないかと思ってしまう。
ちなみに頭つるつると吊すのつる、の二段構え。

でもゆうがてるてると言うのならばそうなのだろうか。良く分からないけど、確かになんというかなんとなくてるてるという感じ。


「なんかかわいそうになってきた…」


「えー、でもきっと私たちのために雨をやますことが出来るのならばそいつも本望でしょ?」


ゆうの手によって目と鼻と口も出来た。にこにこ笑うそれはゆうが作っただけあって実に、…うん。
そのてるてるぼうずを窓際のカーテンレールにつるす。

頭が重いのかぐらぐらと揺れたあとに窓の方をみて落ち着いた。
やさしい表情がちょっとゆうに似ている、と思った。


「明日は、晴れろよー」


「うん。かなもてるてるぼうず、作ってよ」


「効果二倍が期待できる?」


「それはかなの腕次第じゃない?」


クスクス笑うゆう。
つられて笑ってから私も神様を作るためティッシュ箱に手を伸ばす。
ふたつ並べてなかよく揺らして、雨を吹き飛ばしてもらおうか。

ねえ、かみさま?







(おし、出来たし!)

(お、どれどれ…って、こわい!なんかその顔すんごいこわいよ!)

(えー、だめー?)

(なんでそんなに邪悪な笑顔なのー!?)


END.


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