Vanilla | ナノ




bout portant 2


「…でも、静か過ぎじゃね?」

「…雪は音吸い込むからね」

「どれくらい降ってるん」

「さあね、でもそんなには降ってないんじゃないかな」

「ふーん……見てこよ」


こうと決めたら奏は素早いのを知ってる。
「寒っ!!」と腕をかき抱きながらも迷わず窓の方へ歩みよっていく。

かなで、と聞かないと知っていても言ってみる。やはり奏は俺の声も聞かずに、カーテンを開け放した。


導かれるように天を仰ぐ奏の向こう側。
ひたすら、ひたすら降ってくる。

足もとから全身を覆う冷気。夜暗をまばらに白く染める大粒の雪。
硝子戸越しの景色は音もなく、どこまでも静かに。
知らずに、息を止めていた。


「かなで!」

「なんっ」


後ろから唐突にばさり、と毛布に包む。


「そんな薄着で体冷やすでしょうが!」


まくし立てながら奏にぐるりぐるりと巻き付ける。
苦しいし、なんて言ってくるがそんなの無視だ。


「相変わらず頭固いし…、って、寒っ!」


質素ながら肌ざわりのいい生地に触れた拍子に、いまさらのように冷気が背筋あたりまで駆け登ったようで。



[ TOP ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -