Vanilla | ナノ




bout portant 1


うっすらと目を開らき、明りを落とした寝室の静かな夜暗を仰ぐ。

きぃん、と空気が張り詰めている。

自分の小さな呼気と穏やかな鼓動が、なのに耳もとに迫るほど大きい。
何、と呟くのがためらわれるほど、深夜といえどあまりに静かだった。


夜具を擦る音とともに、間近にある気配が動く。寝起きの鈍い頭がその正体を捉えるのに遅れて、肩に手を置かれて更に思考が止まった。
どうしたん、と掠れ気味の穏やかな声が、鼓動をばくばくと急き立て出す。そうだった、ああそうだった。諸々の経過は省くいや何と言われようと省くったら省くけれども、いっしょに、ねていたのだった。


「か、かな」

「んー?なしたん?」

「いやっ、その…なんとなく目、覚めて」


そうだ、『なんとなく』目が覚めたんだ。その俺を出迎えた、妙な圧迫感のある静けさ。
いやに鼻先が冷たくて、確かめようと寝具から手を出したら思わずつぶやいていた。


「寒っ…」

「あー、雪だし」

「え」

「今夜降るって言ってたんよ…。なー、もっとこっち来るし、寒い」

「いっいやいやいや、ちょっ、待って!」


そう言って同じ布団の中で体を引き寄せられる。
温かいしー、なんて言いながら奏はご満悦のようだけど。

こっちは温かいどころじゃない、寧ろ熱くなってきた。

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