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magisch


「奏、はいコレ追加」


書類の山と戦っている彼女の背中にそう云って、後ろから自分が持ってきた書類を頭にぽんぽんと乗せる。

てっきり怒るかと思ったのに、向けてきたのは覇気の無い視線だった。


「お疲れ?」


「…少しくらい手伝ってくれてもいいんに」


「そうは言ってもね、俺も自分のやることあるんだから」


俺の手から書類を引ったくった奏はまた書類に向かってペンを走らせる。
暫くそれを上から見下ろしていると、流石に気になるのか彼女はまたペンを走らせる手を止めた。


「まだ何かあるん」


「昂輝がさ、後で追加の分持って行くよ、って」


「マジでー…」


それを聞いた途端がっくりとうなだれる。

彼女がここまで疲れの色を隠せないなんて、また無茶をしてるんだろう。
区切りが付いた時でも見計らって布団に押し込んでやろう。



「じゃ、確かに渡したよ」


「んー」


了解とひらひら手を上げて、滅多に聞けないだろう間延びした声に思わず心臓が跳ねる。
廊下へ出ようとした足を止め、振り返り再び彼女に近付いた。


「かなで」


「へ?」


背後から顎を抱え頭ごと後ろに反らし、唇を掠めた。

奏の喉の奥で、吐き出そうとした言葉が潰れる音がして。



「労いのキスだよ、仕事頑張って」


End.


8/7〜11/21までの拍手文

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