Vanilla | ナノ




selamat tidum 1


ベッドに潜り込んで、まだちょっと眠くない、と呟いた。

隣にいるヒノアラシは、でも夜だよ、とよくわからないことを理屈にする。


朝にも似たようなことをするんだ。私たちは。

まだ眠い、でももう朝だよ、ほら、同じことを同じように繰り返している。


布団全部取らないでね、なんて言ったってしょうのないことなのに、またそいつが言う。

わかんない、と私が言う。私だって好きで取ってるんじゃないんだから。


「暑くない?」


「ん、ちょうどいい」


「なら、いいけど」


眠くないな、私はぼんやり天井を見た。

部屋の隅まで見渡す。暗くて全てまで目が行かない。


(いいか、全部見えたら怖いし。)


もしかすると部屋の隅にオバケがいてさ、と小さく言うと、やめてよ、と本気で怖がっているような声。

そういうの、あんまり好きじゃないんだから、なんて。

なにそれ、私にもっと言え、って言ってんの?面白すぎ。


私は調子に乗る。


カーテンの裏に誰かいるかも。

やめろってば。ねぇ。

あ、ドアがちょっと開いてる!誰か覗いてるかも!

ねぇ、かなで、お願いだから…。


懇願する様にゆうが言う。泣きそうだ。

泣き出されては堪らないなと思ったので、冗談、と言い掛けたとき、びゅうと外で強い風が吹いた。

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