nociw4
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「あ」
「なっ、なに?」
「あれ」
もう後ろを向いて、後頭部しか見えない彼女にさえどきどきしながら指差す方向を見やれば、流れ星。
白く尾を引く流れ星が、天の川を横切っていく。
「二人、会えた…のかな?」
「なんじゃない?」
「いや、でももう、願わないよ。流れ星にも。」
俺は先ほど結びつけたばかりの黄色い短冊を丁寧にほどき、自分の右手首にくくり直し、これでどうだ、とばかりに天に向けて掲げてみせた。
見たか織姫彦星。俺は自力で叶えてみせる。
「へぇ、それでいいん?」
奏はそう言ってくるものの、満足そうな笑みは隠せていない。
ゆらゆらと手首で揺れる短冊を楽しげに目で追っている。
これはチャンス、とばかりに右手を差し出したら、奏は素直にその手を取った。
俺より細くて可愛くて小さな手から伝わる体温。
温かくて、優しくて、愛しくて。
大きな想いから逃れられて、軽くなった体を揺すり、愉快に歌う笹の葉達。
一つの想いを胸に、二人手を繋ぎながら帰った夜空には無数の星達が列をなす。
俺の一生のお願いは、叶いはじめたばかり。
End.
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