Vanilla | ナノ




たった一言2


暗い中飛び出した。
本当、家なんか仕事場のすぐそばなんだから最初っからそうすれば早かった。



「奏っ!」


「…ゆう、うるさい」



扉を開けて家の中に入ると、ぐてっとソファに倒れ込んでいる奏。

(うわぁぁ!何!どうしたの!!いや、風邪だよ!って叫びたいけどうるさく出来ない!)



「だ、大丈夫…?」


「…なわけないし。ていうかさ、何来てんの?」



仕事中じゃないわけ?、とぜーはーしながら言う。

仕事中って!お前が電話してきたんだろ!


言いたいけど今日は我慢する。



「ほら、ベッドにいきなよ。ソファじゃ寝れないよ」



奏は今にも倒れそうなくらいふらふらしている。
熱も結構あるみたいだ。



「んー…、歩け、ない」


「ああっもう」



がっと抱え上げて寝室に運ぶ。

今日だけだよ、今日だけ!



「寝てなよ。なんか食べたい物とかある?」


「…お菓子…」


「それはダメ」



そういいながら氷嚢を額に乗せてやる。



「冷たー…」


「結構熱あるみたいだね。安静にしなきゃ」


「明日になれば治るし。てか治す…」


「…お前なら本当に出来そうで怖いよ…」



何度も何度も倒れても、次にはけろりとしてるんだから。

この小さな体のどこに、そんな力があるんだか。


(あの背中は本気で惚れそうだよ。否、もう惚れてるけど)


本当に明日には治してそうだ。



「なぁ、ゆう…」


「んー?」


「書類」


「大丈夫、俺がやっとくから」



分かってるよ、と苦笑い。



「だからちゃんと寝てな」



(そしていつもみたいにわがままになってよ)




部屋を出ようとしたら、ありがとうと小さな声がした。


振り返ると言ったであろう人物は寝たふりをしている。


…いや、本当に寝てる?





俺は、気にしないで、と独り言残して部屋を出た。




今度からもちゃんと真っ先に俺に連絡してくれればそれでいいんだから。




END.


080912

081204

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