I'm with you1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・家に帰って、玄関のチャイムを鳴らす。
リビングの明かりがついてたから、奏は先に帰っているはずだ。
パタパタと足音。
ガチャリ、と鍵が外されて。
「ゆう?」
息を飲む音と一緒に、驚いた声が聞こえる。
「ただいま、奏」
「おかえり…って、これなに?」
玄関先から覗き込む奏に、多分俺の顔は見えないはずだ。
俺からも彼女の顔は見えないからね。
(大量の薔薇の花に邪魔されて。)
「プレゼントだよ」
抱えきれないほどのその花束を、俺よりも少し華奢な奏の腕に引き渡す。
「今日はバレンタインデーだから」
花々をかき分けるようにして、漸く見れた彼女の顔は、喜んでいるというより唖然としているというのが一番近いかもしれない。
せっかく俺が君のために用意したって言うのに!
「だって、こんなたくさんの薔薇、一体いくらしたん…?」
「ああ、もう!!いいんだよそんなの、そんなこと気にしないで奏は、ありがとうって言えばいいんだよ!!」
頬に啄むようにキスすれば、ようやく意味が通じたみたいに頬を赤く染めた彼女の顔が、ゆっくりと綻んだ。
「……ありがとう、だし、ゆう」
「どういたしまして」
真っ赤な薔薇の花束。
赤の薔薇の花言葉なんて、花に興味がない連中だって知ってるぐらい、ベタなものだ。
それでもそれぐらいの方が、彼女には伝わりやすいだろうから。
「…ていうか、さ」
「ん?なに」
「なんかこんなん、ゆうに似合わないていうか」
そう言って彼女は、クスクスと笑みを零す。
(似合わないなんて、らしくないなんて自覚してるさ)
そう思いながら花束ごとぎゅっと抱きしめたら、腕の中で彼女は痛い、ってぼやくから。
俺はそんなロマンチックじゃない呟きを洩らす唇は、塞いでしまうことにした。
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