Vanilla | ナノ




白く素直な想いを6


「なー、ゆう」


「…ん…?」


不意に名を呼ばれ、何?と返す。



「美味しいジェラートの店、昂輝くんと見つけたんよ」


「…はい?」


「いや、だからジェラート。ほんと美味しいからさー、今度はゆうもさ」


…えーと、はい。よろしくお願いします、とよくわからず頭を下げたら、彼女は笑って、おごれよ、なんて意味のわからない命令をしてくる。


(うん分かってる、理解しておりますとも)



「てゆかさ、三人で遊んだりとかしたいし」


「三人、って俺と奏と昂輝?」


「そーそー」


「俺、あんまり昂輝と仕事以外で会ったことないんだけど…」


大丈夫大丈夫と手をひらひらさせ、奏は俺を指さす(無意味に)



「昂輝くんにはいっぱい話してるし」


「何を?」


「いつもの、こうやって過ごしてるときのゆうのこととか、さ」


「……、」


でさ、いつがいい?と他の話に移っている奏。



「ちょっと、ゆう?聞いてる?」


うん、聞いてる、と返しはするものの、その前の言葉がずっと頭の中で繰り返されて、ごめん、それどころじゃなくて。


この言葉がどれほど俺にとって大きなものだったのか。

(心の中のとげとげしたものを一瞬で溶かしてしまうんだから)



そしてふと思い当たる。
ああ、もしかしてこれか、さっき俺が遮った話は。

だとしたら、俺って本当ばかじゃないのか。



そんな俺の考えてることが分かったのか、奏が一言。



「ゆう、人の話は最後まで聞かなきゃだめだし」



にこり、と悪戯が成功したように(実際成功したのだろうが)彼女は笑う。




なんだかもう、どうやっても彼女には敵わないようだ。



END.


090201

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