Vanilla | ナノ




たった一言1


電話越し、いつもと少し印象の違う彼女の声。

なんか変だぞ。耳を澄ませて聞いてみる。




『風邪』



なんだって?



『風邪、ひいたんよ』



俺は少し間を置いた。


風邪、って言ったかな。


(いま、かぜっていいましたか?)




『聞いてなかったん?風邪!』


「か、風邪!?」



ガラガラの声が電話越しで喚く。
喚いて、それからすぐに咳が聞こえてきた。


ああ、ホントに風邪なの!



『熱、下がんない』


「熱もあるの!どれくらい!?」


『ゆう、うるさい…』



元気のない声。
いつもの元気は本当に何処へ行っちゃったんだよ!



「ごめん…」


『…昨日、雫ちゃんと遊んだんが、たぶん原因、』


「ああ…」



そういえば昨日、雫ちゃんと遊んでたっけ。

水を掛けられてたみたいだったけど、お前の事だからちゃんと拭かなかったんだろうな。



「…それで、今寝てるの?」


『んー、書類とかやることあるし…』


「馬鹿!そんなの後にしなよ!」


『いや、これ急ぎのだし、』


「無理だって!休んでなよ!」



なんでこういうときだけ真面目なのかな!

いつもこんな風に真面目に働いてよ頼むから!



『あ…、昂輝くん…』


「こ、昂輝?」


『昂輝くんに頼もうかな…。来てくれそうだし…』



昂輝に頼むの!?

じゃあ、俺へのこの電話はなに!?




「…奏」


『な、ん』



「今行くから」

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