Vanilla | ナノ




白く素直な想いを1


「で、そんときなー」


夕食後のなんともいえないゆったりとした空間。

いつもどおりの会話を、いつもどおり流していく。
毎日のようにまるで雨のような彼女の言葉を受けて、そうして毎晩眠りにつくものだから、夢の中まで彼女でいっぱいなのだ。



「池に落ちそうになったんよ、私!」



自分の話をしようとは、いつからか思わなくなった。
たまに本当に何かを話したいときは話を聞いてくれるので、それでいいかと思うようになったから。


ただ、一つ我慢ならないのは、ねぇ。



「でも昂輝くんがなー、引っ張ってくれたからな、落ちんかったんよ」



そうか、よかったね、危ないことしないでよ、風邪でもひいたら、怪我でもしたら、とっても困るんだから、と俺は微笑んで、それから彼の名を数える。


ああ、今日でもう15回目だ、と顔には出さないけれど。


そして彼女は彼に貰ったというチョコレートを食べながら話を続けていく。



「てゆかさ、昂輝くんってなんか凄いんな」



16回目。



「ピンチんとき、ちゃんと助けてくれるとかカッコイイし!本当、昂輝くん好きだし」



……。



奏が昂輝のことを兄のように慕っていて、昂輝も奏のことを妹のように可愛がっているのも知っているのに。



ああ、なんだか限界のようだ。

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