Vanilla | ナノ




眠れぬ夜4


「ま、好きなものだけの世界なんか無理だけどなー」


奏がくすと笑う。

そりゃね、と俺が苦笑い。

ただ確信しただけなんだ、言わないけれどね。




「だからゆうはさ」


「ん?」



「私のことで頭いっぱいにしてればいいんじゃないん?」



ほらそうすればゆうの世界は私でいっぱいでしょ、と恥ずかしげもなく笑う、笑う。


なぜ笑ってそんな恥ずかしいことを言えるんだろうとこちらの熱が上がってしまう。



「じゃあ奏もそうするんだ?」


「それはダメー。私はココアとかチョコのことも考えたいもん」


「なんだよそれ」


「ゆうが、私のこと想ってくれればいいんよ」


「一方通行じゃんか」


「そんなわけないじゃん」




ぎゅうっと抱きしめる腕の力が強くなる。
それだけでもう何も言えず、はぁ、とため息ついて、彼女の背に腕を回す。


(本当に、それだけでいいや、なんて思ってしまうんだから)


最後の最後まで君の世界にいられますように、と俺が祈るような言葉を呟けば、微かに笑う声が聞こえた。




「それだけは約束してやるし」



この悪魔みたいな囁きが最後。






(俺の世界はいつだって君でいっぱいなんだろうな)





End.


→あとがき



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