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眠れぬ夜2


「…ゆう、寒くないん?」


「ん、平気」


「…風邪ひいても知らないけど」


「気力で治すから心配しないで」


「別に心配はしてないから」



ただ風邪ひいて食事作って貰えなくなるのが嫌なんよ、なんて言って奏はそっぽを向いてしまったけれど、かまわなかった。


ねぇ、と声をかけて、返事はないけれどきっと聞いているだろうから。




「奏さ、前言ったよな」



好きなものだけ傍にあればいい、って子供みたいなこと。



「その意味がようやく理解できたんだけど」


「おっそ…」




奏がぼそりと言った。短い反応だけれど、それだけで十分だ。




「好きなものだけ閉じ込めた世界で生きていたいよ」


「無茶だって言ったくせに」



俺の言葉に奏が笑う。


うん、言ったね、と俺は返して見上げると星空。



聞こえるのは無音という名の音。


草木の匂いも、頬を撫でる風の感触も。


俺はそれらが好きだけど。
大事だと思うけど。




(最後の最後まで俺の世界に残るのは、きっと)



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