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眠れぬ夜1


好きなものだけを閉じ込めた世界に生きていたい、と最近強く思うようになった。



夜、なんだか寝付けそうにないので散歩に出かけたとき。

ふとそう自分が思っていることに気づいた。


(面倒くさいごたごたした好きでもないものなんかと切り離された、孤立した世界であったら!と救いようのないことなのだけれど)


いつだか、奏が言っていた。

私は好きなものだけ傍に欲しい、と子供みたいなこと。


(確か夕食のピーマンと睨めっこしていた時だったろう)

俺はそれを聞いてそんな無茶なと苦笑いをしたんだけど、今更になって彼女の言う通りだなと思っている。


好きなものだけ閉じ込めた世界、そんな世界に生きていたら、もしかすると好きなものの中に嫌いなものが出てきてしまうかもしれない。

一つずつ、世界から好きなものが消えていくのかもしれない。
それは少し怖いけれど。




涼しい夜風に吹かれていると、後ろから名を呼ばれた。

ゆう、と傍に寄って来たのは奏。


「急にいなくなってて驚いたんだけど」


「あ、ごめん」


もう寝たかと思ったんだけど、と言えば、

寝てないし!と怒ったように奏が言う。


「何か一言言ってけって感じなんだけど」


「うん、ごめん」


まったく、とまだ少し機嫌がよくない奏。
冷たい夜風にぶると震えた。


どうやら、俺がいないことに気づいて慌てて家から出てきたらしく、薄いパジャマの上、何も羽織っていない。

それがなんだか無性にかわいらしかったので、俺は羽織っていたジャンパーをかけてやった。

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