お菓子とお化け1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「Trick or Treat !!」
何がそんなに楽しいのか、最上級の笑顔を振り撒いて部屋に入って来た奏は、にこにこ悪戯する気満々で笑いながら俺に突進してきた。
そんな笑顔なんかに騙されないと、俺はポケットに入れておいた大きい飴玉を差し出した。
「何これ?」
きょとん、とした間抜けな表情を見せた彼女は、飴玉を眺めながら首をかしげる。
「Trick or Treat、って言っただろ」
のしかかる奏の身体を押し返したが、退いてたまるかというようにさらに彼女はのしかかってきた。
「はぁ!?ゆう何ちゃっかり飴玉なんて持ってるん!?」
ずい、と元々近くにあった奏の顔がより近付いてきて、思わず頭を軽く叩く。
「奏なら来ると思ったんだよ、お菓子好きでしょ」
驚いて目を丸くさせる彼女に気を良くして、笑ってそう言うと、うぅー、と彼女は唸った。
「いらない!!」
「は?」
どさり、と音がした。視界がぐるんと回転する。一瞬おいて、自分が押し倒されたことを理解した。
「…奏?」
菓子をあげたんだから、どいてよ。そういう思いを込めてちょっと睨むと、奏は子供みたいに頬を膨らませた。
「飴玉なんか、いらんし」
拗ねたように言われ、渡した飴玉の封を開けると俺の口に押し込んできた。
口腔内に広がる甘い味と、甘い香りに、俺はすこし顔をしかめる。
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