Vanilla | ナノ




そんな君に滅法弱い2


それにしたって、なんで急に本なんか読んで、さ。
しかも、なんか難しそうな本。


絵本でも読んでればいいのに。

(何なら読んであげるのに)


その方が奏っぽいし可愛いというかなんというか。


というか、凄く暇!

そりゃ、近くにはいられる。こうして隣にいられる。
…騒がない彼女は、少し物足りないけれど。


というか、なによりも、俺の事放っておき過ぎじゃないか?



…。



って…。



何考えてるんだ俺。
頭おかしくなったのか。


静かな部屋に(あるいは彼女に)びびりすぎ!



「…なぁ」


「なに。今読んでるんだけど」



うわっ!このやり取りって昨日やったよね!!
ただし、俺が君で君が俺!つまり逆の立場で。


(そしてその前の日も、そのまた前の日も、ずっと前の日も、やったんだけど)


馬鹿みたいなくり返しが、恥かしくも嬉しかったりとか。


(もちろん言えやしないけど)


急に立場変わって、ああそうか、これが奏の気持ちかーとか、思ってみたり。


ふと、気付く。奏の立場、奏の気持ち。


ああ、なるほど?そういうことか?


悪戯をする子供はいつだって、本当に天才的なんだから、さ。


(凡人じゃ思いつきやしない)



「なぁ、悠?」


呼びかける。
にやりと笑って、彼女はこちらを見た。


「なに、奏」


くすり、笑いを精一杯殺す。

(こいつはやっぱりとんでもない奴だ!)


「その本、面白いん?」


至って真面目な風に。それが当然のような口ぶりで。
慣れない彼女の言葉を口にすると、物凄くくすぐったい。


彼女はちょっと意地悪な顔をして、本を閉じる。


「全っ然面白くないし!!」


ああ、ダメだ。
目が合った途端、全て理解する。


(やっぱり!そう言うことか!本当にお前って奴は!)



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