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pompoen 2


俺はまたため息をついてしまった。
今度は彼女が反応することはなかった。


「パンプキンスープにパンプキンパイ、パンプキンタルト、パンプキンスコーン。挙句の果てにはパンプキンケーキだなんて…。カボチャ嫌いの私にとってはハロウィンの時期の食事は拷問みたいなもんなんよ!なんでこうも揃ってカボチャばっかりなんだし!!」


奏はいつの間にか握りしめていた拳でテーブルを強く叩いた。
食器が音を立て、先ほど彼女がカップに注いだ紅茶は零れてテーブルクロスをまた汚す。

ちなみにこのテーブルクロスは今日買ったばかりのもの。
赤と黒のチェック模様が可愛いからなるべく汚さないように使おうな、と言ったのは間違いなく俺ではなく目の前の彼女なのに。


「そりゃあれでしょ?ハロウィンといえばカボチャのランタンだから偏っても仕方ないじゃん」

「でもひどくない!?どうせならトリック・オア・トリートで渡すだけのお菓子でいいのに」


紅茶を味わいもせずに飲み干すと奏は頬を膨らませて拗ねてしまった。
まったく忙しい子だ。

別にカボチャ料理なんて放っておけばハロウィンだろうが関係ないのだけど、彼女が一番に怒っている理由が好きな菓子店全てがカボチャを使った新メニューばかりを出すのが気に入らないだけだという、意外とお粗末な理由だったりする。

だから俺はため息が止まらないのだ。
苦手なら大好きなショートケーキかモンブランを食べればいいのに「ここの店の一ファンとしては、」とか「お店の可愛い子に勧められたから、」なんて大層矛盾した理由で買ってくる。

そして案の定食べられずに俺に渡し、先ほどの会話を繰り返すだけだ。
今月に入ってこのループを繰り返しただろうか。
俺は片手で足りなくなったところで数えるのを止めた。



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