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そんな君に滅法弱い1


部屋がなんだかとっても静か。

それが本当、怖いくらい静かで。



時折、紙の擦れる音がして。


それだけ。


それしかない。部屋にその音しかない。



「奏?」



恐る恐る、声をかける。


本当にそこに居るの、と聞きたいほど静かに、彼女はそこにいた。


ソファに座って、珍しく本を読んでいる。



「なに、ゆう」


「え、あ、いや。うん。珍しいね…、奏が本読むのって…」


「そう?」


「何読んでるのさ」



少し間。奏は本の表紙をちらと見た。
結構分厚い本だ、な。



「哲学の本」


「え゙っ!?」


「嘘だけど」



奏は俺の反応を見てくつくつと笑う。



(だってそりゃ、驚くだろ!!)



普段まったく本に興味を持たない彼女が、さっきからずっと本を読んでいる。
しかも、かなり静かに(ここ重要!!)

いつもは、分からない部分があるとすぐに聞いてくるのに。
なぁここのこれどういう意味?とかいいながら(その時は、ちょっと遠回しな表現を聞いてきた)

教えてあげると、回りくどい、とか顔をしかめて言ったのを覚えている。


そして大抵、すぐに飽きてまた我侭を言い出すのだ。
そう、それが普通なのにさ!



さっきから本当に無言で、ずっと本を読んでいる。
一体、どうして。風邪でもひいたのか?なんでそんなに静かなんだよ!!



一緒に居るはずの部屋は、本当に静か。



熱でもあるんかなぁ、とか本当失礼なんだけど、思ってしまう。
だってこんな事、今までなかった。



ぼんやり。
彼女の横顔を見る。

瞳が文字を追う。


(本当に読んでるんだ、なぁ)



正直な所、暇過ぎて死にそうな俺。
普段からかまえと喚くのは彼女の仕事。


どうしたものか。

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