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zimno 4


──ピピピ。


「平熱いくつだっけ」


「…いくつあったの?」


奏はあえてなにも答えず、黙って手のひらを悠の額に乗せた。
水仕事を終えた手に心地よいほどしっとりと火照っている。


「ゆう熱出すと後から後から上がるからな。今日は一日寝てるし」


「…でも、」


「いいって。たまには『耐える』以外のコマンド使うし」


「こま…?」


いつまでも実感が定まらない季節の変わり目が原因だと思われた。
気温の上下に体がついていかなかったのだろう。


「…怒った?」


「なんで?怒ってないし」


「さっき、おっかない顔してた…」


悠がおずおずといえば、奏は今にも深いため息を漏らしそうな顔をした。


「なあ、ゆう」


「…なに」


「私はゆうが青い顔でうろちょろしてんのを見るのは嫌だし、今にも倒れるんじゃないかってハラハラすんのも嫌だし、辛そうにウンウン唸ってんのを見んのだって嫌だ。分かる?」


「…………」


「分かってるよな。てか分かっとくし、なんとなくでいいから。そんで寝てな。ゆうがいない間の家のことは私が何とかするし兎に角寝てな。寝て治すし」


畳みかけるように言われて、そして実際に布団をまた手荒く首もとまで被された悠は口を噤むしかなかった。
ひねくれた物言いでも、奏なりの言い回しで悠を心配しているのが分かる。

こんな暴君じみた物言いこそが悠を安心して休ませるのかもしれない。
そう思ったら妙に納得させられて、どこかでぴんと張っていたような気持ちも急に弛緩した。


「…ありがとね」


言えば奏の手が軽く抑えつけるように悠の目元を覆う。

寝てなって、と最後のだめおしに、心にかかることをなにもかもあきらめて意識を放り出した。


そのぎりぎりまで指が触れていて、今度の寝入りはなにも怖ろしくなかった。



END.


110912


実は一昨年から書きたかった悠が体調崩す話。

当初は看病出来ない奏が昂輝くんに泣きつくという話になるはずだったのですが、見事に成長してくれました。
捻くれてるけどね。

かっこいい奏が好きです、というか受けが好きです。

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