Vanilla | ナノ




engouement mutuel


※もしも、な話
『悠が女の子だったら』

※GLです




「ねえ、かなはバレンタインにどんなのが食べたい?」

お弁当を食べ終えてまったりしていたら、ゆうがそんなことを言って一冊の本を取り出した。
『バレンタインのためのチョコレートスイーツ』
私は身を乗り出して、その本に飛びついた。

「えっ、ゆう、作ってくれるんっ?」

フォンダンショコラが大写しになっている表紙と、ゆうの顔を交互に見て尋ねる。
すると彼女は、やさしく微笑んだ。

「うん、かなが食べたいやつを作ろうと思ってる」

私は思わず、レシピ本を胸に抱きしめる。
ゆうの姿が輝いて見えた。

口から、ほうっという溜め息が漏れる。

「ゆう……大好き……!」

「やだなあ、言わなくても分かってるって。ほら、選んで選んで」

「あっ、うん!……ええ、でも、迷うし……。表紙のフォンダンショコラが、既にもう美味しそう……」

「うんうん」

「でもやっぱりチョコレートケーキかなぁ?なぁ、この、フロマージュショコラって美味しそう」

「そうだねえ」

「チョコレートプリン……」

「うんうん」

なかなか決められなくてグダグダになる私のことを、ゆうは笑顔で見守っていてくれる。

ああ、だって、どれもこれも美味しそう。
それにゆうの手に掛かれば、どのお菓子を選んだって素晴らしく美味しく作ってくれるのだもの!
どれを引いても当たり。
そこからひとつ、難しい。

「……よし」

私は、ぱたんと本を閉じた。
ゆうが「おっ」と小さく声をあげる。

「決まったの?珍しく早いね」

「この本、借りて良い?」

私は真面目な顔で言った。
直後、ゆうの笑い声が弾ける。

「うんうん、良いよ、ゆっくり選んで。一個に絞れなかったら、二個でも三個でも作ってあげるから」

彼女は肩を震わせて、私の頭を撫でた。
二個でも三個でも、という気前の良い発言に、私の胸は高鳴る。

「えっ本当!? ……でも、そんなに食べたら太っちゃうし……」

「良いよ良いよ、ちょっとくらい」

「ゆうは細いもんなあ……」

「あとね、私かなの好きなカルボナーラ極めたんだ、それも作るね」

「えー凄い!楽しみ!」

私は手を叩いて喜んだ。
バレンタインパーティー、なんて素敵なイベントだろう。

それじゃあ、私からのバレンタインプレゼントは何にしようかな。
食べ物は彼女が色々作ってくれるみたいだから、それ以外が良いな、また考えておこう。
それで、私も彼女に贈るのと同じのを買って、お揃いで持とう。
ゆうはお揃いが好きだから、きっと喜ぶはずだし。

それから、兄のように慕う昂輝くんのことを考えた。
昂輝くんはどうしようか、誘ったら来るかな。
だけどゆうがやきもちやくからなぁ、どうしようか。

そんなことを思いながら、またレシピ本を見る。
ああ本当に今から楽しみだ。


だからバレンタインは大好き!



END.


遅れたけど、ハッピーバレンタイン!


誰得な話ですみません。
私は楽しかった!

悠は女の子になっても大して変わりません。


110307

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