正しさと優しさの不一致 2


夜、初めて風呂を別にした。
昨日の今日だ、ライムの裸を前にしたら嫌が応にも反応してしまう。

ライムがいなくなったのを見計らって風呂に入る。
一緒にいない俺達を見て喧嘩か?と聞いてくる奴らもいたが、まさかとだけ返した。

喧嘩ならばどれだけよかったか。
だけど俺はライムと喧嘩などする気はさらさらない。
好き過ぎて、怒る気なんて全く起こらないんだ。

なんだか早くものぼせそうで、俺はさっさと風呂から上がった。

ぽたぽたと垂れる水を適当に拭きながら部屋までの道のりを辿る。
部屋に戻ればライムがいるかもしれない。

…思いきって、俺が考えてたことを話して、ライムの本当の気持ちを聞いてみようか。
もしかしたら答えてくれるかもしれない。

…うん、そうしよう。
一人で悩んでたってしょうがない。

少し気分が浮上したところで、若干気合いを入れながら角を曲がる。
そこで俺は見てはいけないものを見てしまった。


ライムと、キク先輩が、抱き合っていた。


優しく、慈しむようにライムを抱き締める先輩と、安心した顔で身を預けるライム。


そういう、こと。

俺は踵を返し別の道から部屋に戻った。
分かった、何だ、そういうこと。
頭の中がすうっと冷えて暗い感情が心に満ちていく。

…相手はキク先輩、か。

確かにライムはよく彼の元に話をしに行っていた。
でもそれはキク先輩の家で世話になってるって話を聞いたことがあったから、二人が会うことに別になんとも思わなかった。

だが、その時に二人は。
いや、もしかしたら以前から?
だって、あんな風に愛しげに抱き締めるなんて、ただ世話になってるだけじゃないだろ。

二人には、好きって感情がどう見たってあるじゃないか。



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