真綿で首を絞める 6


「いやあああああああああっ!!!」


瞬間、僕は叫んでいた。
ザクロが驚いて手を引っ込める。

ふ、と目の前が真っ白になって体が傾ぐのが分かった。
だけど倒れ込む衝撃はなくて、代わりに暖かく包み込まれる感覚。

…ザクロ、だ。

うっすらと目を開けた先で僕の顔を覗き込むザクロの心配そうな顔。
何かを叫んでる。
聞こえない。




捨てられたくなかった。
お母さんにいらないって言われたから、だから僕は君には必要としてほしかった。

そのためならば何だってしてあげたかった。
だって僕は君を好きだったから。
よくわからないけど、きっとそう。

ザクロが望むならと体を差し出したけれど、本当は、君に抱かれたくなかった。
今までみたいに幸せな時間を生きたかった。

母のこと、あいつらのこと、忘れて生きられると思った。
君さえいてくれれば。
君さえ僕を見てくれれば、他に何もいらなかった。

だからお願い。
ザクロ、何でもするから、もし叶うならば、君は僕を。


「愛して…」


その言葉を告げて、僕は意識を手放した。


僕が君の兄弟ならよかった。
そうしたら君は僕に体なんて求めたなかったのに。
そうしたらただ僕を見てくれたかもしれないのに。
…いや、でもそれだったら、ザクロと同じ時間と空間を共有することは出来なかったかもしれない。
どっちにしろ、僕はいらない子なのかな。



…ねぇザクロ。
君は僕を抱きたくないって言ったね。
抱いてさえくれないのなら、教えてください。

体がいらないならば、僕の価値は、どこにあるのですか。

ただ必要として欲しいだけなのに。どうしてこんなに苦しいの。誰かお願い、こんな僕にも。




どうか、居場所を、ください。



END.


120315

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