真綿で首を絞める 3


どさ、とお尻から布団に落ちる。
ちょっと痛かったけど、布団のおかげでそこまで衝撃はなかった。

そんなことよりも僕はザクロに突き飛ばされたことに吃驚した。
何が起きたのか理解出来ずに、ただ呆然とザクロを見ていた。

それは、初めてのザクロからの拒絶だった。

お互い何も言わずに見つめ合う。
違う、少なくとも僕は言葉が何も浮かばなかった。
苦しそうに顔を歪めるザクロにどうしたらいいのか分からなかったから。

ザクロは暫くぎゅう、と目を瞑った後、ゆっくり目を開き僕の目を真っ直ぐ見て、言った。


「…俺、もう、ライムを抱かない」

「え…」


意味が分からなくて思わず聞き返すと、ザクロはぎり、と奥歯を噛み締め低い声で告げた。


「…俺は、ライムを抱きたく、ない」


抱きたく、ない。

何を言われたのか分からなかった。
ザクロの言葉が頭の中で何度も何度も響く。


抱きたくない、抱きたくない、抱きたくない、抱きたく、ない。


その言葉は、存在意義を体に見出した僕を殺すのには、十分だった。

何で、どうして、だって、昨日は君から抱きたいって言ったじゃない。
どうして、そんなこと言うの。
なんで、どうして。

やだよ、やだよ。

僕は情けなく尻餅をついていた格好から体制を四つん這いに直し、縋るようにザクロの夜着の袖を掴んだ。
有り得ないくらいに震える自分の腕がいっそ可笑しい。

僕は笑いながらザクロに問いかけた。


「ザクロ、僕、君に嫌なこと、しちゃった?何か気に障ること、しちゃった?」

「……」

「ね、ザクロ、ザク、ロ」



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