真綿で首を絞める 1


部屋に戻ると二組の布団が少し離れて引いてあった。
ゆらゆらと揺れる頼りない蝋燭の明かりの中、もうお風呂に入ったらしく夜着を身につけたザクロは窓側の布団の上に胡座をかいて何かを考えこんでいた。

僕が部屋に入り戸を閉めるまで気付かなかったみたいで、音に気付いたザクロがばっと顔をあげ僕を見た。
らしくないな、と思いながらザクロに笑いかける。


「ザクロ、布団ありがとう。何か考え事?」

「…いや」


珍しく歯切れの悪いザクロを不思議に思いながらも、まだ僕に何も話してくれないことを悲しく思っている自分に呆れた。

もういいと、ザクロのことは諦めたのに、まだどこかでザクロを心配している自分。
だからもうザクロはそんなの望んでいないのに、馬鹿な僕。

僕は僕の望まれてることだけをしていればいいんだよ。
あのお寺でされてたみたいに。

大丈夫、向こうでそうだったみたいに気に入られる自信あるし、上手くやれる。
ザクロが望むことなら何でもしてあげられる。
大丈夫、大丈夫。

自分に言い聞かせているとザクロがライムさ、と言った。


「…さっき、キク先輩と、何してたの」

「さっき…?」

「廊下で二人で」


ああ、見てたのか。

ちょっと心配されちゃって、なんて口が裂けても言えない。
だからちょっとお話してただけだよ、と告げるとザクロの瞳が曇った、ような気がした。


「…話してただけで、何で抱き締める必要があるんだよ」

「え、」

「抱き合ってただろ、二人で」

「ああ、うん」

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