観念としての孤独 2


その後、起床を知らせる鐘の音が聞こえ、僕はザクロに支度してご飯食べに行こう、と笑いかけた。

昨日ザクロに抱かれながら僕、思ったんだよ。
君に体を求められて僕はとても悲しかったけど。
もうどうでもいいやって思うくらいに胸が痛くて苦しかったけど。

だけどね。
例え君があいつらと一緒で、僕の体が目的でも…それでもいいかなって、思ったんだ。

体だけでも必要としてくれるならば、僕はそこに居場所を見いだせるから。
ザクロの側にいられるから。

ね、僕、痛いの我慢するから。
どんなに酷くしてもいいから。

だから僕をいらないなんて言わないで。
側にいさせてね。


布団をしまうためにザクロに背中を向けていた僕は、彼がどんな顔をしているか、分からなかった。



それから。
授業中も、ご飯の時も、ザクロはどこか遠くを見ていた。

授業中いつもどんなにぼんやりしていても彼は質問に答えられたのに、今回は本当に聞いていなかったようで「分かりません」と答えていた。
勿論クラスメートも吃驚していて「本当にザクロか?」なんて疑いを持った程で。

クラスの子に何を言われても、ザクロは曖昧に笑うだけだった。
心配になって僕が何を尋ねてもザクロは何も言わなかった。
それが、なんだかとても悲しかった。




「ライム」


初めてザクロと別々にお風呂に入った帰り、優しい声が僕を呼んだ。
振り返った先には救急箱を持ったサーナイトのキクさんがいた。


「キクさ…キク先輩」

「こら、ライム。二人の時は先輩はなしって言っただろ?」

「…はい、キクさん」

「うん、よし」


嬉しそうに笑うキクさん。
僕はこの人の笑顔が好きだ。
暖かい人柄がそのまま滲み出たようなそれはとても暖くて柔らかくて、なんだか酷く安心する。

それを以前キクさんに告げたら、キクさんは嬉しそうに「家族だからだよ」って教えてくれた。
だから、僕とキクさんは家族で、特別だ。



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