巡り巡って現実 2


なのに、こいつは、笑ったんだ。
心底嬉しそうに、安堵したように。

初めてこいつが偽りじゃない笑顔を見せた瞬間だった。
唖然としている俺に、こいつは言った。


『…あのね、僕、ザクロ君に必要とされたい。ザクロ君、僕を必要としてくれる?』


不安と、ほんの少しの期待を瞳に宿らせて訪ねたライム。
その表情と言葉で気付いた。

何故こんなにライムに執着したか。
同じだったからだ。
境遇は違えど、根底にあるものが。

お互い、自分だけを見てくれる、自分を必要としてくれる、誰かが。
欲しかったんだ。
それはきっと。

一人でいることが、寂しかったから。

変な奴。
思わず出た言葉にライムはびっくりしていた。
だけど次の瞬間には、嬉しそうに笑った。

そうして俺達は寄り添うようになった。


俺の前でだけ本当の笑顔を見せるようになったライムと、ライムにだけ態度を柔らかくする俺に、同じ組の奴らは騒然とした。
そのうちクラスのやつらとも打ち解けていき、俺は他人も捨てたもんじゃないと思った。

何よりそう思わせてくれたのは、いつも隣にいたライムだった。
ライムはいつも俺に無償の愛をくれた。
だから俺は二人でいる時が一番楽しかった。

ライムが笑う度に心に幸せが満ちていく。
強くなれる。
いつしかライムはそんなかけがえのない存在になっていた。


俺がその気持ちの名前に気付いたのは、その年の終わりだった。


1つ学年が上がった時、初めてこの思いをライムに告げた。

ライムは最初戸惑っていたが、しばらくしてから僕も、と小さな声で返してくれて。
今でもその時の嬉しさを昨日のことのように覚えている。



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