恋愛論的ミスマッチ 11


ようやく見送りを終え店内に戻ると、ルクシオはカウンターにもたれかかり何処かぼんやりとしていた。
珍しい姿に声をかけあぐねていると彼が先にこちらに気づいた。


「お疲れさん」


ニコリと笑い労いの言葉をかけてくれるが、その声はやはり元気がない。


「どうかされたんですか?」

「ん?何が?」

「少し顔色がすぐれないようですので」

「そうか?ここ最近フル稼働だったからなー。疲れてんのかも」


驚いた。
どんなに忙しい日でもルクシオの口から「疲れた」などという単語は聞いたことがなかったから。


「アブソルも疲れたろ。そういや毎日手伝ってもらってたもんな。おまえ、自分の仕事があるのにそれ終わってすぐ来てくれたし。キツかったら遠慮なく休んでくれていいんだぞ」

「そんなこと…」


酷いことを言う。
私はここで働くことを毎日どれだけ楽しみにしているか、彼はちっともわかっていない。

キツイなんて思うものか。
彼の傍に居られるのなら、睡眠時間などなくても良い。


「私は、ここで働けることにとても感謝しています」

「…コキ使ってるのに」


困った風に彼が微笑む。
彼らしくない弱々しい笑みに本当に体調が悪いのではないかと心配になる。


「あなたの役に立つのならなんだってします。好きなだけコキ使ってください」


紛れもない本心だ。
けれど、彼はキっと私を睨み付けてきた。


「おまえがそんなこと言うから…っ」


何故か言葉尻が震えている。
こんな彼の声は聞いたことがなかった。
まるで苦いものでも吐き出すような彼の声に、何か怒らせるようなことを言ってしまったのかと不安を覚える。



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