恋愛論的ミスマッチ 10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本日最後の客は私の顔見知りだった。
表まで見送りに出ると、その顔見知りの女性は私の腕に手を絡ませてきた。
「最近遊んでくれないのね」
「忙しいので」
「新しい彼女?」
何を馬鹿げたことを。
思わず笑ってしまった。
私が働くところをわざわざ見に来ておきながら、忙しいのは彼女が出来たせいではないと確認しただろうのに、この質問の無意味さは一体なんだろう。
もし仮にそうだとしてもこの女性には全く関係ないことだ。
絡み付いてくる手を押し戻すと、その女性は「フン」と鼻を鳴らした。
「妬けちゃうわね。私と付き合ってるときはいつも『つっまんねーっ!!』って顔してたくせに」
「そうでしたか?」
意外だな。
そう思ってたのは私のほうだ。
この女性を含め、今まで付き合ってきた者達は皆つまらなさそうな顔で私を見ていた。
「すっとぼけちゃって」
呆れたため息に、私としても苦笑を返すしかなかった。
結局、お互い様だったのかもしれない。
私は彼女達と一緒に過ごすことに喜びを覚えたことはなかった。
私はつまらない男だけれど、だからと言って彼女達に何かを求めているわけではなかった。
私は何も求めない。
彼女達も私に何も求めない。
こんなのつまらないとしか言いようがないではなか。
ルクシオと同じ時間を共有するようになり、私はその空しさがようやくわかった。
私は彼に求められたいと思う。
店の手伝いや新作の試食や、どんな些細なことでもいい。
彼に必要とされたい。
私が彼を必要とするように。
彼にとっても私がそうでありますように、そう祈る気持ちで私は毎日彼を見つめる。
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