恋愛論的ミスマッチ 6


少し、しまったなと思った。
こんな話をするんじゃなかった。

彼はいつも楽しげなのに、今は眉根を寄せて唇を尖らせている。
こんな顔させたかったわけじゃない、確かにそう思うのにどんな顔でもルクシオは可愛いのだな、とも思った。

いい男というのはきっと彼みたいな男のことを言うのだろう。
どんな時でも魅力的で傍に居る者を飽きさせない。


「あ、そうだ」


最後の一枚を洗い終えたところで、唐突に彼が声をあげた。


「おまえ、明日も時間作れる?仕事終わってからでいいんだけど」

「ええ」

「俺の店、最近忙しいんだよな。一人でするのキツくなってきたから、よかったら手伝ってもらえねーかなーって」


少し照れくさげに鼻の頭をかく。
自分の立ち上げた店が軌道に乗っているのが誇らしいのだろう。

彼がどれほど頑張ってその店を切り盛りしてきたのか知っているだけに、彼の申し出はとても嬉しいものだった。
嬉しくて…、すぐに頷くことは出来なかった。


「駄目か?」


何も言わない私にルクシオは不安げに瞳を曇らせる。
慌てて首を振った。


「いえ、駄目、ではないんですが、…その、私で良いのかと思って」


大事な店なのに、私のようなつまらない、しかもあまり良い噂をされていない男が居てはせっかくの客も逃げてしまうのではないかとそのことが引っかかった。
けれど、彼はニッコーっと笑ったのだ。


「バカ!おまえが良いんだよ!」


どうしてこんな風に笑えるのだろう。
笑って、こんなことを言ってくれるのだろう。

込みあがるような胸の疼きを感じる。
嬉しいはずなのに、どこか痛い。

膨れ上がった気持ちに胸がキシキシと軋むような気がした。



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