恋愛論的ミスマッチ 5


「またかよ!」


途端に彼は素っ頓狂な声で叫んだ。
が、失言に気づいたのだろう私と目が合うと、しまった、と顔を引きつらせた。

本当に何を考えているのかすぐに顔に出るのだな。
素直な反応が微笑ましい。


「ええ、また」


彼の言葉を繰り返すと、シュンとうなだれた。


「ごめん……」

「いえ、その通りですよ。私もいい加減自分に愛想が尽きてるところです」


この手の話を彼とすることはあまりないが、どこから話は聞いているのだろう。
彼は私が女性と長続きしないのを知っている。

いや、人づての話というのはどこまでも大きくなっていくものだ。私自身でさえ驚くような、例えば「既に子供が三人居る」など突拍子のない噂も聞いたことがある。

そういう類の噂は彼の耳に届いてなければいい。
事実でなくても、彼にそう思われるのはきついなと思う。


「おまえ、いい男なのになあ〜」


しみじみとした呟きにますます苦笑が深まってしまう。
彼が本気そう思っているのがわかるから、余計に困ってしまう。


「いい男ならこんなに振られたりしませんよ」

「まあそうだろうけど」


即座の肯定に食器を洗っていた手が止まる。
…彼は本当に素直だ。


「でも、やっぱり俺にはわかんねえわ。ほら、次」


止まった手元を見咎められ、また洗うことを再開した。
しばらくはカチャカチャと食器のぶつかり合う音とルクシオが不満げに唸る声だけが台所に響く。



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