恋愛論的ミスマッチ 3


人をもてなすことに関して彼は天才ではないかとすら私は思っていた。
いつまでも見ていたいとすら思う。


「ほい、水!っと、へっへー、じゃん!これ、なんだと思う?」


すぐに戻ってきた彼は私の前に水差しを置くと、もう一方の手に持っていた小さな壷を差し出した。
なんだろう?
考える間もなく、彼は壷の中身を私に見せる。
どうやら私に考える権利はなさそうだ。


「ラッキョウ!自分でつけたんだ!」


そう言うと彼は手早くカレー皿にいくつかラッキョウを乗せ、また流し台の方へと戻っていった。
くるくるとまるでコマネズミのようによく動く。

飽きないな。
見ていて、本当に飽きない。


「どうした?何笑ってんだ?」


自分の分のカレーを手に彼が戻ってくる。
不思議そうな顔に私はどう答えていいかわからず曖昧に言葉を濁した。

彼に対するこの気持ちをどう説明すればいいのか、説明どころか彼に対するこの気持ちは一体何なのか、それすら私はわからなかった。
とても好ましく思っているのに、他の仲間達に対する気持ちとは少し違うような気がする。


「変な奴。まあいいや。それより、全然すすんでないじゃん。早く食えよ、冷めるぞ」

「ええ」


私が困り果てる前に、彼はいつもこうやって話しを切り替えてくれる。
パクパクと勢いよくカレーを掻き込む彼につられ、私も食事に意識を戻した。

お手製らしいラッキョウの甘酸っぱさが口中にひろがる。
とても美味しい、そう思った。

思ったものの同じ言葉を繰り返すのは憚られ、結局黙ったままになってしまう。
私は本当につまらない男だ。



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