恋愛論的ミスマッチ 2


「どうだ?うまいかっ?」


一口目を口に運んだ途端、机に身を乗り出しながらルクシオが聞いてくる。
まだ味なんてよくわからない。
でも、早く何か言ってあげたくて口の中のカレーを懸命に咀嚼する。

その間、彼は期待に満みた目で自分を見つめてきた。

あ、おいしい。
そう思ったのと自分を覗き込む顔が綻んだのは同時だった。
パアっと顔を輝かせ、どうだと言わんばかりに鼻を膨らませる。


「そっか!うまいか!」


私はまだ何も言っていないのに。
ようやく口の中のカレーを飲み下し、はい、と返事をした。


「とても美味しいです」


我ながら面白みのない言葉だと思った。
嘘ではないけれど、もっと相応しい言葉はいくらでもあるような気がした。
彼もそれを期待しているのではないか。

けれど彼は気分を害するでもなく満足げににんまりと笑う。


「だっろー?俺、天才じゃね?ほら、遠慮しないでもっと食えって!おかわりはたんまりあるから!あ、今水持ってきてやる」


そう畳み掛けるように言うと今度はバタバタと忙しなげな足音を立て去って行く。
感嘆とする思いでその後ろ姿を見つめた。

彼は、すごい。
いつも明るく、元気で、とても優しい。
私のようなつまらぬ男を前にしても、ああやって楽しげに振舞ってくれる。
偽りのない瞳で嬉しそうに笑ってくれる。



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