僕が僕であるために 5


そしてまた数年が経ち、いつしか僕はリーフィアになりザクロはエーフィになった。
僕とザクロは幸いにも、同じ部屋で生活していた。


「ザクロ、今日も疲れたね」

「ああ、あの実技はないな。先生は俺達を殺す気か」

「ふふ…ザクロったら…でも今日はよく寝れそう…ね、ザクロ…」

「ん?ライム、もう眠いの?」

「うん…だから、キス、して…?」


いつものように一つの布団に入り、眠る前の日課になっているキスをねだる。
正直もう眠たくて目をちゃんと開けていられない。

口を少し尖らせてザクロに口づけを求める。
よく眠れるおまじないのようなものだった。

ザクロの唇が下りてきて、ゆっくり僕の唇に触れる。
暖かく柔らかい感触。
幸せな気持ちでそれを受ける。

ところがぬるりとしたものが上唇を突然舐めた。
びっくりして口を開けたら何かが滑り込んでくる。
いつもなら触れるだけの優しいそれが、口内まで荒らされる激しいもので。

いつもと違うザクロが何だか怖くて、僕は抵抗も出来ずにただただ怯える。
嫌な、予感。


「…ライム」


唇を離したザクロは真剣な、だけどどこか切羽詰まった顔ですっかり息を荒げた僕を見ていた。
見つめる瞳には、覚えのある揺らぎ。
その視線に僕は震えた。

それは、僕を求めてきた僧侶達と同じ、欲に濡れた目だった。

いつの間にか上に乗られ、身動きの出来ない僕は彼を見つめるしか出来なかった。
ザクロはライム、と熱っぽく僕を呼んだ。


「…ごめん、もう、限界なんだ…。ライム、俺、ライムを抱きたい」


僕は目を見開く。
頭が真っ白になった。


抱きたい。
僕を。
ザクロ、が。


脳裏に浮かぶのは自分を犯し続けたたくさんの僧達。
そこにはもちろん好きなんてなかった。
体と痛みと、耐え難い恥辱だけ。

そんなことをザクロも、僕にするの。
また、同じことをするの。

あんな酷いことを。
優しかった、ザクロ、も。


…じゃあ好きって言葉は、なんだったの。

どうして、僕に、好きだなんて、言ったの。



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