僕が僕であるために 1


僕は、捨て子だった。
お母さんに手を引かれて、気がついたら山の中、独り。

まだ小さなイーブイで、歳は7つになったばかりだった。
肌寒い秋のことだった。

僕の家は兄弟姉妹がたくさんいて。
その中で僕は体も小さく、働き手にもなれない役立たずだった。

だから捨てられた。


お母さん、と小さく呟いた声。
お母さんはこっちを一度も見ずに元来た道を帰って行った。

僕は追わなかった。
だって、僕はいらない子だって分かってたから。

ごめんなさい、お母さん。
産まれてきて、ごめんなさい。

でも、それも伝えられなくて。
ごめんなさい。



それからしばらくして。
たまたま通りかかった僧侶が死にかけていた僕を拾ってくれた。

優しそうに笑うその人は暖かくて、優しくて。
僕は、昔に見た母の優しい面影を、彼に見た気がした。

大きなお寺に連れて行かれて僕はそこでお世話になった。
そこには修行だとか行儀見習いだとか、僕みたいに捨てられたとかで世話になっている人がたくさんいた。
たくさんのお兄さんと、弟が出来たみたいだった。

それからは、質素で厳しいながらも賑やかに毎日を生きたと思う。



でも、11歳になった時だった。

夜、僕は呼ばれて僕を拾ってくれた僧侶の部屋に行った。
こんなの初めてだったから、僕は嬉しくて、何をするんだろうとにこにこしながら部屋に向かった。

あの人は好きだった。
いつだって優しかったから。
とにかく一杯お話が出来たらいいなって思いながら部屋に着いて、声をかけて中に入って。


そうして。

僕は、犯された。

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