とびきり、優しい闇1


轟々と吹き荒れる風の音よりも大きい自分の心臓の音を聞きながら、オレはそっと隣で眠るチナの様子を伺った。

すうすうと言う規則正しい寝息。

完全に眠っていることを確認して、オレはそこから離れた。


このままじゃ、本当に心臓が止まってしまいそうだから…。


だが、洞窟を出て行くワケにはいかない。

外はひどい嵐だし、目が覚めたときにオレがいないと、きっとチナが心配する…。



(どうしよう…)



見ないようにとしているのに、ついチナの方に目がいってしまって、また心臓がバクバクしだす。

だってすごく可愛いんだもん…。

寝てるときのチナには、いつものきつさはなくて、あどけないとすら言えるくらい。


何度か一緒にお昼寝したこともあるけど、寝ぼけてオレに抱きついたり、軽く爪を立てたり、ペロペロと身体を舐めたり…


て、ダメだ!!オレ!!


今、それ思い出したらヤバイってばっっ!!


オレは頭をブンブンと振って、チナに背を向けると、洞窟の入り口、雨の当たらないギリギリのところまで下がって地べたに丸くなった。

そうして目を閉じ、深呼吸する。



何か別のこと、考えよう…


あ、そだ。隣の森の木の実、すっげおいしかったって誰か言ってたっけなー

今度食いに行ってみよ…



無理矢理にそんなことを考えているうちに、なんとか気持ちも落ち着いてきて、とろとろと眠気を感じ始めた。


(そういやここ最近、慢性的に寝不足だったから、眠くないわけ、ないんだよ、ね…)


その思考を最後に、オレはやっとこさ眠りに落ちた。

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