とびきり、優しい闇4


「……」


オレは言葉に詰まる。



本当はそれが、チナにとって一番いいんだと思う。


同族の雌の仔と番になって、子供を残して……


(…イヤだ)


チナが他の誰かと一緒になるなんて、イヤだ。



そんなの、見たくない。

チナを好きなのはオレなのに。

こんなに、チナが好きなのに…。


そのくらいなら……



「ねずみ…?」


オレはベッドの上に昇り、チナの肩にそっと触れて、そのまま優しく抱きしめた。

またチナの身体がビクンと跳ねたけど、チナは逃げなかった。


「…あのね、チナ。オレのこと、軽蔑してもいいから、オレの話聞いて…?」


「……?」


さっきから煩く鳴りっぱなしの心臓の音を意識しながら、続ける。


「あの…、あのね…オレ、チナのことが、好き」 


煩い、煩い、心臓の音。

大事な話してんだから、邪魔すんな。



「ものすごく、好き。誰よりも好き。一番好き」


「……」


「だから…、だから、ね。…そ…その、……」


段々と声が小さくなっていくのが自分でも、わかる。


「その…こ、交尾の相手は、チナがいいな…て、ずっと…、おも、思って、たん、だ……っ」


言ってかあーっと顔に血が昇る。思わずチナを抱きしめる手に力が篭った。

煩い心臓の音に邪魔されて、ちゃんと言葉になっていたのか自分にもわからない。

チナの反応を気にする余裕すらなくて、肩口に埋めた顔を上げることもできないでいた。



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