こころ、安定を失くす2


「ここなら、大丈夫だ」


チナに連れられてきたのは、森の中の洞窟。

入り口は草や木の陰になってて、ここに洞窟があるなんてわからないくらいだった。


「明るい…」


思わず呟く。

外は雨で暗くて、中にだって光源なんかないのに、その洞窟は全体的にほんのり明るい。


「奥に光苔が生えてるからな」 


チナが、ふるりと身体を振って水を払いながら言う。

成る程、結構深い洞窟らしい。



「干草もあるから、一晩くらい平気だろ」


チナがけろりと言った。



(…へ?)



「あ、あの、ここで、寝るの?」


チナと一緒に?


「ああ。オレもときどきここで寝てるぜ。大丈夫だ。寝心地は悪くない」


(いや、そうじゃなくて…。)



それって絶対やばいでしょ。



「あ、あの、オレ、か、帰る、ね」


「は?ムリだろ。この雨じゃ」


確かに、外はどゃぶりの雨。おまけに雷まで鳴り出した。風も強くて、今外に出るのはかなり危険だと思う。

でも、ここでオレとチナが一緒にいるよりは、危険じゃないと思う。


主に、チナにとって。


「う、うん。でも、帰る」


そう言って急いで出て行こうとしたオレに、


「待てってば」


そう言ってチナが手を伸ばした。


「……っ」


思わず、その手を跳ね除けてしまった。



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