もしもしきこえる5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それからオレ達は、いつもの様におしゃべりしたり(オレが一方的にしゃべってる方が多いんだけど)草で作ったボールで遊んだりして、やがて夕方になった。
「あーあ、もう帰んなきゃ…」
夕日を見ながらオレが名残惜しそうに呟くと、チナも
「うん…」
て、心なしか残念そうに頷く。
来た道を、また並んで引き返す。
チナと話しながら、オレは昼間のことを思い出していた。
(…発情期かぁ…)
全然関係ないことじゃ、ないんだよね。
オレより少し前に生まれた奴らの中には、もう子供がいるのも、いる。
チナだって、次の季節あたりには、迎えるんだろうなぁ…
そう思ったら、なんだか胸がツキンって痛む。
同時に、しっぽを触ったときの、チナの顔を思い出して、また顔やら何やら熱くなるのを感じた。
(ホント、何なの?これ…)
「おいっ、鼠!」
「わぁっ!?何!?」
突然呼ばれて、体が跳る。
「何って、分かれ道。お前、そっちだろ」
ああ、そうだった。オレのねぐらに帰るには、ここでチナとさよならしなきゃ。
「うん。じゃ、またね…」
「ああ…」
そう、挨拶を交わしながらも、オレの足はそこから動かない。
チナも、オレの方を向いたままで、先に進もうとはしない。
(…まだ、一緒にいたい…)
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