4


途端に大人しくなった彼を薄目を開けて見てみれば、酷く安心した顔をしていて。

どうして。
なんでそんな顔をするんだ。

もう心の中はぐちゃぐちゃだった。
どうしたらいいのか分からない。
目頭だけがひたすらに熱くなった。
情けない、と自分を殴りつけたくて仕方なくて。

キク先輩にあんな大見得切ったくせに、実際俺には何もできない。
どうしたらいいか分からない。

さっきだって、ただ優しく抱き締めてやりたかったのに、現実は力任せにライムを抑えつけていた、そんな自分に吐き気がする。
これではライムを酷い目に合わせた奴らと同じじゃないか。
分からない、分からないよライム。
どうしたらいいんだ。
教えてくれよ、ライム。

泣きそうになるのを誤魔化す様にライムの首もとに顔を埋め、ぐちゃぐちゃの想いを吐き出す。
どうか届いてくれと、一人にしないでと、一人だと思わないでと。
そう祈りながら。


暫くの沈黙の後、ライムがもぞりと体を動かした。
そして告げられた言葉に衝撃を受ける。

ザクロが、分からせて。


顔をあげた先には不安気な表情に確かな決意を滲ませて、真っ直ぐに俺を見る彼の瞳。
ライムが、前に進もうとしている。


−ライムを、よろしくお願いします。


キク先輩の言葉を思い出し俺はライムの頬に手を添える。
ぴくりと震えたライムを安心させるようにそっと撫でた。


「…ライム」


答えるように目を細めたライム。
正直俺には経験もないし知識も人並み程度しかない。
またライムを傷付けるかもしれない。

でも、そうしないことだってできる筈。
そう、俺にしかできないことがきっとある。
ライムが俺といて幸せを感じてくれていたならばできる筈だ。



[ TOP ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -