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そう、あれは本心。
どんなに俺を拒んでも、過去に怯えても、誰かに絶望しても、それでもライムは誰かに愛してほしいんだ。
あの時、必要とされたいと告げた彼は、きっと本当は愛してほしいと願っていた。
安らげる誰かを欲してた。

それは俺だって同じ、誰かに愛してほしかった。
ライムがいいと思った。
だから俺は。


「ん…」


小さく、ライムの声が聞こえた。
まだどうしたらいいかはっきりと打開策が見つかってないのに、と内心焦りながら何て声をかけようかと考える。
ふいにライムがある人の名を口にした。


「キク、さん」


その名前を呟かれ、また心がぐにゃりと歪んだ気がした。
真っ先にあの人の名前。
ライムが求めてるのは、あの人で。
側にいてほしいのも、本当の兄のような、あの人で。

俺のことなんか、もう。

また芽生えそうになる醜い感情を必死に抑えていると、キクさん、とまたライムが声をあげた。
まるで子供が親を探すような不安を滲ませて。

だから思わず声をかけてしまった。
それが失敗だったと、すぐに分かった。

ライムの纏う気配が変わる。
穏やかだったそれは急激に堅くなり、怯えと恐れが混じった冷たいものとなった。

ああ、まだ考えが纏まっていないのに。
しくじった。
焦ってしまった。

ゆっくりと衝立から姿を見せればライムの顔は恐怖でくにゃりと歪んでしまった。
それが辛くて、辛くて。
もう一度名前を呼んでも、それは変わらなかった。



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