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「…もう、いいんだ。キク先輩から全部聞いた。ライムが、すごく、苦しんでたこと」

「え、…え、ぇ?」


全部、聞いたって。
何を。

全部って、まさか。
だってそんなの、一つしかない。

彼は知ってしまったんだ。
僕がお母さんに捨てられたことも、寺でどんなことをしていたかも。
だってキク先輩が僕についていうことなんて、ザクロがこんなに言い辛そうに言うことなんて、それしかないじゃないか。

僕の、一番、知られたくないことじゃないか。

僕はぎゅうときつく目を瞑った。
ザクロは今僕をどんな目で見てるんだろうか。

ああ、怖い、ザクロに知られてしまった、怖い。
僕は、僕はもう、ほんとに、ザクロに絶対捨てられる。
知られたく、なかったのに。
ザクロには僕のこんなこと、知ってほしくなかったのに。

そこまで考えてふと疑問が一つ、胸にくすぶった。

…なんで、ザクロには知ってほしくなかったの?


「…君が過去に受けた仕打ちで苦しんでいたことに気付けなくて、本当にすまない。だけどこれだけは信じてほしい。俺はそいつらとは違う。俺は、俺は本当に本当に君が好きで、愛しくて仕方ないから、君を抱いたんだ。信じてくれライム。本来なら体を重ねることは愛を示す行為なんだ。だからあの行為を汚いものだと、酷いものだと、どうか思わないでくれ」


愛を示す行為。

その言葉に頭が真っ白になる。
愛、あれが、愛?

あんなもののどこに愛があるの。
自分の快楽だけを求めてるくせに、どこに愛があったの。
それよりも、何よりも。


愛って、なんなの。



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