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だけどねと、続けるキク先輩の声は小さく震えていた。


「そんなライムが初めて、人に興味を持ったんだよ。いらないって言われることに怯えるばかりで人と深く付き合わなかったライムが、初めて。そう、君に興味を、持ったんだ。君と出会ってからあの子は幸せそうだった。君の話をするあの子がどんな顔をしてるか知らないだろう?本当に嬉しそうに、楽しそうに話すんだ。だから僕は、君なら大丈夫だって。隣を任せられるって、思ったのに君はそんなライムの気持ちを踏みにじったんだ。遊びだなんて、酷いことをするから、ライムはまた戻ってしまった…」


ぎゅうと、先輩は膝の上に置いた拳を強く握った。
血管が浮き出ている程にきつくつくられたそれは震えていて、やり場のない憤りを耐えているようで。

本当ならば俺を殴り殺したいに違いない。
だけどそうしないのはキク先輩が優しい人だからだ。
そんな人に自分のちっぽけな嫉妬で殴らせてしまったなんて、なんて俺は浅かで、愚かなんだろう。

先輩は一度深呼吸をすると両手と頭を廊下について姿勢を低く低くした。
所謂土下座というそれをぼんやりと眺めていると、先輩は頼む、と低く呟いた。


「…ライムのこと、好きじゃないなら…そしてもしこの話を聞いてライムに少しでも嫌悪を抱いたならもう近寄らないでくれ。性欲処理のためならば僕を使って構わない。だからお願いだ、もうライムを傷つけないで」


あの子に幸せをあげて。


そう懇願するキク先輩からはライムを本当に大切に思っているのがひしひしと伝わってくる。
確かに俺はライムを傷つけた。

だけど、何だって?
性欲処理なら?
この話を聞いて嫌悪を抱いたら?
誰が?
誰に?


みくびんじゃねえよ。



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