始まりの風が吹く日1


オレ、ライチュウのカケル。

どっからどう見ても雄。


チナ、イーブイ。

見た目は目茶苦茶可愛いけど…


オレと同じ雄。








森ん中散歩してたら、大きな落とし穴を見つけた。どうやら、人間が仕掛けた罠らしい。


バカだね。こんなん引っかかるわけないじゃん。


そう思いながら、穴を避けて通り過ぎようとすると…



「……」



穴の中から、なんか生き物の気配がした。


何?もしかして罠にかかっちゃったのがいるワケ?


中を覗き込んでみたけど、暗くてよく見えない。



「誰かいんの?」



そう穴の中に声をかけた。



「……」



応えはないけど、確かに何かいる気配がする。



「怪我してんの?応えらんない程ひどいの?大丈夫?」


「…たいしたこと、ねぇよ…」



少し間を置いての応え。



聞き覚えのない声だった。この辺の仲間はみんな知ってるはずだけど、どっかから来た新入り君かな?

声からして、オレと同じ歳くらいのピカチュウかライチュウかな?

そう思って興味が湧いた。



「何こんな見え見えの罠にかかってんの。不注意じゃん」


「うるさいな、ほっとけよ。こんなのあるなんて、知らなかったんだよ」



せっかく心配しているのに、あんまりな言い草。でも、言葉とは逆に、なんだか拗ねたような口調が可愛い。

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