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「…それにライムだってすげぇ男慣れしてたし、あいつもただヤる男が欲しかっただけじゃないんですかねぇ?まぁ、俺は別に誰でもよかったからいいんすけど−…」


−−がつんっ!!!


瞬間、左頬に凄まじい痛みが走り受け身も取れずに地面に転がった。
ぐらぐら揺れる頭を抑え、右手で体を支えなんとか上半身を起こす。

見上げた先には殺気を丸出しにしたキク先輩。
ああ、普段怒らない人間程怒らすと怖いって言うけどほんとだな、とぼんやりと感じた。


「…何するんですか」

「…ザクロ、お前、本気で言ってるのか」

「本気ですよ」


そうだ、本気で好きだったんですよ。
いや、好きなんですよずっと。
今も変わらず。

俺にはライムしかいなかったのに、ライムがいればよかったのに、必要とされたかったのに。
ライムが俺を必要としてくれれば何もいらなかったのに、ライムにはあんたがいたんだろ。
誰よりも何よりも近くにあんたがずっといたんだろ。
なのにどうしろって言うんだよ。

俺に何ができんだよ。
あんたがいるのに。
あんたが、いるから。

どうしようもないんだろうが…!!


胸倉を掴まれて馬乗りになったキク先輩が再び右手を振り上げる。
いくらでも殴り返せたがそれも馬鹿らしくて俺は抵抗もしないで目を閉じた。

もういい、いくらでも殴ればいい。
それにここで俺が殴られれば悪いのは完璧に俺になる。

そしたら大丈夫、ライム。
元に戻れるよ。

君は悪くないから。
これで君がキク先輩の元に戻って、俺と寝たことは夢だとでも思って、それか俺から無理矢理だったと言って。
そしたら君は幸せになれるから。
キク先輩なら大事にしてくれる。


…幸せに、なれるから。



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