4


保健室に着きライムを備え付けの布団に寝かせ部屋を出るキク先輩についていく。
戸を閉めたところでキク先輩が俺を睨む。
真っ直ぐに俺も睨み返した。


「…ザクロ、単刀直入に聞くけど」

「…なんすか」

「ライムを、抱いた?」


真っ直ぐに俺を睨むキク先輩。
…正直驚いた。

何で分かったのか。
…あぁ、分かるか。

そうだよな、ライムと付き合ってんだからどんな些細な変化だって気付くよな。
なんだ、俺がライムに手を出したことに謝ってほしいとかそんなん?
馬鹿じゃねぇの、他の男に触れさせたくないなら縄にでも繋いで閉じ込めておけばいいだろ。
どいつもこいつも。
なんなんだよ。

ああ、苛々する。


「はぁ、抱きましたけど」


壁に体を預けて腕を組み、ちらと横目で見ながら何でもないように告げる。

ぴり、と空気が乾いた。
それは間違いなく、殺気。


「…それは、二人は付き合ってるってことでいいのかな」


付き合ってる。
そうだ俺はそう思ってた。

でも違うんだろ、あんたが本物で俺は遊びだったなんてあんたが一番知ってるじゃないか。
廊下の真ん中で抱きあってたくせに、何を白々しい。
反吐が出る。

今にも爆発しそうな自分を必死で抑え、はっと馬鹿にするように笑ってやった。
そうさせるのは自分のちっぽけな愚かなプライド。


「付き合ってなんかいないですよ。ただの遊び。まぁ男なのにライムの体、結構よかったっすけどね」


そう強がる自分はどこまでも滑稽だった。

何が遊びだ、違うだろ。
ライムがよかったくせに。
ライムじゃなきゃ嫌だったくせに。
ライムだから、あんなに幸せを感じられたのに。

なんて情けない虚勢だ。
本当は違うんだ、こんなこと言いたいわけじゃないのに。
なのに。

俺はもう一度吐き出すように、わざと笑いながら告げた。



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