3


「ザクロ!」


強く肩を掴まれはっとする。
振り返るとクラスメートが焦った顔で俺を見ていた。
何と聞く前に殺気、と一言言われ、どうやら感情が外に出ていたらしく周りのやつらも引きつった顔をして円を描く用に俺から距離を取っていた。

ふう、とキク先輩は溜め息をつくとライムを横抱きに抱え上げにこりと人のよさそうな笑みを浮かべてみんなに解散するようにと告げた。
その静かな威圧感にちらちらとライムやキク先輩、俺を気にしながらみんな静かに部屋から出ていく。

誰もいなくなったのを気配で察し、キク先輩はまた俺を睨んで言った。


「…ザクロ、ちょっと話がある」

「…はい」


真っ直ぐに歩き出すキク先輩の後につく。
男一人抱えているのに全くふらつかない歩みは、どんなに細くてか弱そうに見えてもキク先輩も男なんだなと思わせた。


ライムに触るな。


心の中で叫びながら先輩の背中を睨む。

…本当は俺がライムを運びたい。
ライムに誰一人触れてほしくない。
だけど。

俺の右手が触れたあの瞬間、絶叫した彼が頭を過ぎって。

自分はライムに触れていいのか、分からなかった。



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