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次第にライムは痙攣が収まり、息遣いも一定になっていった。
表情も幾分か楽そうだ。

知らず握りしめていた自分の手を開いて見れば汗で濡れていた。

それはライムを心配したからか、それとも醜い幼稚な嫉妬からか。
そう思ったらなんだか苦い気持ちが込み上げてきて俺は顔をしかめた。

キク先輩はふう、と一つ息を吐くと部屋の中や外にいるやつにも聞こえるように大丈夫だよ、と少し声を張り上げた。


「過呼吸を起こしてたけどもう大丈夫だよ。ライムは保健室に連れてくから、みんなは部屋に戻ってゆっくり休んで。驚かせて悪かったね」


にこりと話すキク先輩に周りはほっとしたようによかったなーと口にした。

俺は何も言わず未だキク先輩に抱えられたライムに視線をやる。
安心しきった穏やかな顔にずきりと胸が痛んだが、ライムが落ち着いたことには本当に安堵した。
…触れていいのか迷ったが、せめて頬を濡らしている涙だけでも拭おうとライムに手を伸ばす。

瞬間ぱしん、と乾いた音が部屋に響いた。

一瞬何が起きたか分からなかったが、俺を真っ直ぐに見るキク先輩に叩き落とされたのだと直ぐに分かった。

キク先輩は普段の穏やかな顔からは想像できない程憎しみをこめた顔で俺を見ていて。
…なんなんだ一体。
どうして俺があんたに睨まれなきゃいけない。

殺してやりたい程憎いのは俺の方なのに。



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