正しさと優しさの不一致 3


とん、と戸を閉める音がして驚いて顔を上げると、ライムがいた。
気配に全く気付かない程考えこんでいたみたいだ。

布団ありがとう、と言われて初めて自分が二人分の布団を敷いていたことに気付いた。
習慣とは恐ろしい。
無意識に体が動いてしまう。


「何か考えごと?」


そう言って不安気に見てくるライムに、心が重くなる。

ああ、考えてたよ。
だって分からないんだよ、君のことが。

二年の時、初めて言葉を交わしたあの日から君は俺の特別で唯一の存在で、誰よりも君を理解しているのは自分だと思っていたのに。

でも君は。
…君は、違ったのか?

俺にだけ見せたあの柔らかい幸せそうな笑顔は、全て全て、嘘だったのか?
俺に必要とされたいと言ったのも嘘?
本当は誰でもよかったのか?
ライム、ライム。

今にも叫びだしそうな自分を抑え、絞りだすようにさっき自分が見た光景をライムに伝える。
違うと言ってほしかったのにまるで恋人同士のように抱き合っていたことを隠すでもなく当たり前のように認めたライムに、沸々と怒りが沸くのが分かった。

あんなに好きで仕方なくて、怒る気すらしなかった俺に芽生えた、狂気のような感情。
信じられない。
信じたくない。

でもこの言い方は俺が彼の恋人ではなく、キク先輩が恋人だったようなそれで。
俺の方は遊びだったから、別にばれてもなんともないと。
そんな意味合いに、とれて。
君が男に慣れてたのは、そんな風にした相手は。


「…相手はキク先輩だったのかよ」

「え?相手?」

「嫌なら嫌って、はっきり言えばよかったのに。そしたら俺はー…」


そしたら俺は、こんなにライムのこと、好きにならなかったのに。



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